8月14日午後5時
竜飛岬は半島の山から下ったところにあった。ついさっきまで快晴だったのに山の上から下りはじめると岬は霧で見えない。霧の中にいきなり竜飛岬はあった。それまで人がこんなところまで来るのだろうかと思いはじめていたが、さすがに観光地らしく、売店や大きな駐車場があった。そして霧の中に多くの観光客がいた。
穏やかだった天候とうって変わり呼吸が苦しい程の風がふいていた。真夏なのにTシャツでは肌寒い。当然夕日は無理だ。ここから北海道まで青函トンネルがのびている。
津軽海峡を左に見ながら、陸奥湾をめざす。やがて平たんな海岸線、ここがあの北津軽郡「チタツンガルズン」だ。寒い冬、唇を大きく開けて喋ることが出来ないから、「ピンク色」は「つんくぇろ」と聞こえる。ちょうど夕暮れ時、夏なのに厳しい冬を連想させるようなグレー一色。どの家も木造の板塀、潮風にはこの板塀が一番強いのだろうか。ずっとずっとグレーの板塀が続く。海岸線ぞいに港や集落が続いているが何処まで行ってもグレー。晴れているが、東向きで当然夕日はないのでただ暗くなって行く。やがて辺りは真っ暗になった。ときどきある集落の明かり。この北津軽には極寒の冬に来てみたいなあと思った。
暗い夜道を考えながら走った。このあたりで、明日は何処に行こうと考えた時、ここまできたら東北一周をしてやれと思った。なにも目的を持たずに走ることも悪くはない、「日本列島海岸線一周」しちゃおうかなと思ってきた。ただ漠然と。「フォレストガンプ」という映画でトムハンクス演ずる主人公が町の端まで走ったら、州の端まで言ってみようと思った、州の端についたら大陸の端まで走ってみたくなった。そして海についたら反対に向かって走り出し、大陸横断した。別に意味なんかなかった。けれども周りの人はすごいことだと騒ぎはじめる。というシーンがあった。まるで主人公のガンプになったようなそんな自分を想像して楽しくなって来た。午後9時、青森市内のビジネスホテルに着く。北津軽郡を走っている時に宿泊表という本から探して予約を入れた。やはり、すぐにとれた。昼間見た「十三湖のしじみ」の看板がある居酒屋に入る。中に入って寿司屋だとわかる。大きなお椀山盛りのしじみ汁と寿司と地酒の夕食。ここでは「盆だからネタがない」とか言われなかった。でもやはりネタはないんだろうな、しじみ汁だけが美味しく感じた。

竜飛


砲台の後


陸奥湾から津軽半島突端を見る。